2015年5月12日火曜日

なぜ大学院選択に迷う学生は地方国立大より有名私大や旧帝大の大学院に行った方が良いのか?





もしあなたが現在大学生で、自身の指導教員に「大学院はどこに入ったらいいですか?」と聞いたとします。すると、多くの大学教員は「東大や京大のような旧帝国大学か早稲田や慶應のような有名私立大学に入りなさい」と応えるはずです。

あるいは、その分野でとても有名なそれらの大学に準ずる大学院に入りなさいと言うでしょう(人によっては、「そんな質問をする時点で大学院には入らない方が良い」といじわるな(生徒思いな?)回答をしてくる教員もいるかもしれませんが)。

学生の中には、「いやいやマイナー大学に入って研究成果を上げた方がカッコいいでしょう」と言う人もいるかもしれません。というより、稀にですが実際にいます。ただ、そういった方たちは以下のそれぞれの記事を読んでおかれることをお勧めします。


お説教
学歴ロンダは基礎学力を身に付けて海外に出るべし

マイナー大学に自分がどうしても成し遂げたい研究が、あるいは指導教官が熱心に指導してくれる保証が、指導教官の研究にどうしても興味がある場合は異なりますが、カッコいい程度の想いで大学院に行くとほぼ必ず後悔します。

ここでは、上の2つの記事よりももっと具体的にメジャー大学のメリットとマイナー大学のデメリットについてお話していきましょう。

大学が支出する研究費の違い

ある意味、これが一番の違いだと言っても良いかもしれません。大学の教員や研究室によってももちろん研究費は違いますが、それと同時に大学単位での研究費にも大きな差があります。

たとえば、とある大学Aの文系研究科では実験室や院生の部屋というものがなく、学部生と部屋もパソコンも共有しながら1つのテーブルを分け合っている状態なのに、大学Bの研究科では院生の部屋がいくつもあり、各人のテーブルとパソコンが大学から支給され、実験設備どころか実習室や資料も無料で全て申請可能な状態という格差も平気であります。

また、研究設備だけの話ではありません。研究費が違うということは、交通費の支給や学会への参加費などの支給、果てはティーチングアシスタントの経歴やリサーチアシスタントの経歴にも大きな影響を与えます。

国内学会の交通費・宿泊費まとめ―誰が支払う?安い交通手段は?―

加えて、大学Aでは学会のポスター印刷、名刺印刷を全て自費で賄っているのに、大学Bにはポスター印刷用の機械、名刺印刷用の機械があり、全部研究費から支出されるといった差もあります。

大学院生のための名刺の作り方からおススメの印刷所まで

それに有名大学は、国際学会への発表支援制度を持っている場合がほとんどです。国際学会の発表費と言えば、最低でも数十万円単位のお金が飛んでいきます。そのため、研究を熱心にやりたいという人ほど、メジャーな大学に進んだ方が良いと言えるでしょう。

経済状態が思わしくない人は、何が何でもメジャー大学に入った方が年間に数十万単位でお得になる可能性もあるのです。

学振や受賞歴を持つ先輩がたくさんいる

研究職を目指す院生にとっては、むしろこちらの方が大きいかもしれません。奨学金の申請、学振、学会の受賞歴etc……と、初めての学生には申請の仕方が全く分からないものもあります。

ですが、旧帝大や有名私大、あるいはそれに準ずる大学の中には参考になる先輩たちの資料が大量に保管されています。大学によっては、学振に通るためだけの勉強会まであるぐらいです。

すでに申請書の書き方を知っているか否かという時点で、メジャー大学とマイナー大学の間には大きな差が広がっているのです。もちろん、指導教官に丁寧に指導してもらったり、本人の実力があればそういった資料がなくとも戦えるのかもしれません。とはいえ、マイナー大学が不利な状況に置かれていることだけは知っておいた方がいいでしょう。

ちなみに、学振申請の独学用の資料としては『科研費獲得の方法とコツ 改訂第3版』 や『採択される科研費申請ノウハウ―審査から見た申請書のポイント』などもありますが、あくまで科研申請用のものなので、直接的な資料とまでは言えません。あくまで参考程度です。

就職したい人にとってはメジャー大学が断然有利

そして、なにより研究分野を志望していたとしても、その夢を諦めることになったとき、メジャー大学に在学しているかどうかはかなり大きなファクターになってきます。「大学院レベルだとそんなことは関係ないだろう」と思われるかもしれませんが、就職に関して言うなら、大学院にも大学の学歴格差というものは存在します。

たとえば旧帝大レベルだと、就活セミナーを自身の大学で開催しているだけでなく、 時には企業の側から説明会を行いたいという場合もあります。他にも、潤沢な資金を使って学生向けの面接対策セミナーからキャリアアップセミナーまでを行っていることもしばしばです。

また、これは地理的な問題ですが、大半のメジャー大学は都会にあります。 つまり地方よりも就職活動をしやすいのです。始めから就職を目標として進学する人はもちろん、夢半ばで研究職を諦めることになってしまった時のリスク管理のためにも、基本的にはメジャー大学に進学されることをお勧めします。

ここまでの事を踏まえて

ここまでの事を踏まえて、それでもまだメジャー大学には進まないという方は、何か確固たる信念のようなものがあるのでしょう。それはそれで構わないと思います。実際、地方国立大学や一般私立大学がメジャー大学に研究内容で“劣っている”と言いたいわけではありません。あくまで環境レベルの問題です。

ですが、少なくともその選択は様々な面で大きく不利になる選択であり、人並み程度の努力ではひっくりかえせない差だということは覚えておく必要があるかと思います。それを踏まえたうえで、あなたの努力が実ることを祈っております。